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こどもセーフティセミナー「子供を事故から守る環境づくりとは?」を開催

不慮の事故を未然に防ぎ、子供を事故から守る環境づくりに取り組む、東京都のこどもセーフティプロジェクト。この取り組みの一環で、東京都は2024年3月14日、こどもセーフティセミナー「子供を事故から守る環境づくりとは? ~みんなが安心して使える製品開発のヒント~」をオンラインで開催しました。

東京都では、子供の見守りを中心とした事故予防の考え方に加えて、子供の成長や行動に合わせて「危ないところを変える」事故が起きにくい環境づくりを進めています。今回のセミナーでは、子供向けの製品・サービスを開発している事業者はもちろん、乳幼児の育児や保育に関わる人にも参考になる、子供の安全を守るヒントを紹介しました。その内容をレポートします。

講 師:西田佳史 さん(東京工業大学工学院 機械系教授)
ゲスト:中原俊三郎 さん(公益社団法人日本インダストリアルデザイン協会(JIDA)理事)
司 会:石原あいみ さん(フリーアナウンサー)

■子供の“転落”に関するセーフティ・レビューと5つの提言

東京都は2023年度、子供の転落事故について、科学的な視点から事故の実態を解明し、実践的な予防策を取りまとめるプロジェクトを実施しました。最初に、このプロジェクトに協力した西田さんからセーフティ・レビューの研究結果と提言が紹介されました。

子供の死亡原因の第二位は事故であり、その中でも、重症事故を含め最も多いのは転落・転倒事故です。西田さんは実験データから、一瞬で起きる事故に対しては見守りによる予防はほぼ不可能であることを示し、「少しぐらい目を離してもいいように環境をデザインすることが大事」と説明。また、家庭においては「よじ登り」と「寝返り」による転落・転倒事故が多いことから、「子供がよじ登れる高さ」「よじ登った家具を引っ張る力」「寝返りの速さ」といった調査や実験データが提示され、そのうえで、得られたエビデンスから導き出した事故予防策が、提言として5つ示されました。

・提言1
エビデンス:窓際に配置された家具等から転落している
事故予防策:家具の配置を見直す

・提言2
エビデンス:70cmを超える高さでもよじ登れる
事故予防策:よじ登る動きを抑制する

・提言3
エビデンス:最大で体重の約半分の力で家具を引っ張る
事故予防策:家具を固定する

・提言4
エビデンス:寝返りは1秒間で20cm進む
事故予防策:落ちない場所で寝かせる

・提言5
エビデンス:成長とともによじ登れる高さは高くなる
事故予防策:床の材質を見直す

■ゲスト対談「みんなが安心して使える製品開発のヒント」

続いて、子供の事故を防ぐ製品開発のヒントについて、ゲストに中原さんを招き、西田さんとの対談が行われました。中原さんが理事を務める日本インダストリアルデザイン協会では、西田さんとの共同研究で、子供の商品を開発するときに使用する設計支援ツールである「キッズデザインツールズ」を開発したことをきっかけに、西田さんや東京消防庁などと共同研究会で取り組みを進めています。

・子供の安全を守る製品開発の考え方
西田さんは「事故予防は目を離さないことではなく、目を離してもよい環境にすること。そのための製品デザインをお手伝いするよう心がけている」と述べました。

・ツールを活用した安全な製品開発について
中原さんは「製品開発においては、試作品を子供たちに使ってもらうなどして、どこに問題があるかをよく観察することが大事。そこにいろいろな気づきがあり、それによって解決方法も見えてくる」とコメント。安心して使える製品開発に役立つ「キッズデザインツールズ」の活用の仕方や、これを活用して開発した製品の実例を紹介しました。

・資料やデータをデザインに生かすことについて
西田さんは、何が子供にとって危ないかを事故データの分析や調査結果から把握した上で、中原さんらとともに進めてきたキッズデザイン製品の開発事例を紹介。こうした製品開発にセーフティ・レビューの提言が活用できることを示しました。

■事故や怪我を未然に防ぎ、子供を守る環境づくりへ

質疑応答では、視聴者から事前に寄せられた以下の質問に西田さんが回答しました。

1)環境を把握するときに、日常で気をつけるポイントはありますか?
2)子供のチャレンジと事故予防対策のバランスをどうしたらいいですか?
3)おもちゃなどのデザイン・設計の段階において、事故を回避する方法はありますか?
4)製品を利用する側(保護者など)に安全意識を持続してもらうために、製品に取り入れられる方法や手法があれば知りたいです。
5)高額なものを購入して対策することが難しい中で、すぐにできる対策はありますか?

最後にこのセミナーを振り返って西田さんは「データに基づいて子供の事故予防を推進するプロジェクトが東京都で始まったことに期待を寄せている」と話し、「視聴者の方々と一緒になってデータに基づく環境デザインを進めていきたい」と期待を込めました。

また中原さんは「デザインを行う上で、子供の安全を考えることは社会性や公共心を育むもの。皆さんにも日常生活で子供にとって優しい環境について考えていただければと思う」と願いを述べました。

 

視聴者からの質問に対する西田さんの全回答や、セミナーのアーカイブ動画はこちらでご覧いただけます。

https://kodomosafetypj.metro.tokyo.lg.jp/event/