記事・コラム column

  • HOME
  • 記事・コラム
  • 「東京国際消防防災展2023」開催 最新の車両・設備・装備が多数出展

「東京国際消防防災展2023」開催 最新の車両・設備・装備が多数出展

国内最大級の消防・防災に関する展示会「東京国際消防防災展2023」が2023年6月15~18日の4日間、東京臨海都心の東京ビッグサイトで開催されました。最新の消防車両をはじめ、国内外の消防・防災に関する最先端のサービスや製品が一堂に集結。その中から、注目を集めた出展物をピックアップして紹介します。

消防自動車の電動化

今回の展示会でのトレンドは、消防自動車の電動化です。まず、コンセプトカーとして特に注目されたのが、モリタホールディングスのEV※1消防ポンプ自動車「MoEVius concept (メビウス コンセプト)」。ゼロエミッション※2、低騒音・低振動化を実現した、日本初のEV消防ポンプ自動車で、独自開発したePTO (ポンプ駆動システム)とe-Fire Pump(EV専用ポンプ)により、高いエネルギー効率を実現しています。

また、トーハツが展示したのは、コンパクト3輪EV消防バイク「颯(はやて)」。ベースはEVモーターズの「バルサ」で、艤装前のスペックで最高速度55km/h、航続可能距離は100kmとなっています。ポンプはトーハツの「VE25AS」を搭載し、こちらは2ストローク・ガソリンエンジンで駆動し、燃料タンクを装備。運転には普通自動車免許が必要になります。

そのほか、災害現場での情報収集や広報活動を支援する査察広報車において、三菱がプラグインハイブリッド車「エクリプスクロスPHEV」、トヨタが燃料電池で発電する電気自動車「MIRAI」をベースにした車両を展示。防災分野においても、電気自動車の導入は今後ますます加速することが予測されます。

※1 電気自動車
※2 企業活動や市民生活による廃棄物の排出(エミッション)をゼロにするという考え方のこと

防災・減災アプリ&クラウドサービス

防災・減災領域においても推進されているのがDX※3です。情報を広範囲で共有でき、より迅速で効率的な対応を可能とする「防災のデジタル化」は、人命救助の観点から今後必要不可欠といえます。

消防団向け活動支援アプリとして開発されたのが、エプソンアヴァシスの「コミュたす」。現役の消防団員が地元消防関係者の協力を得て作った、消防団のためのスマホアプリです。LINEによる簡単操作で、消防団員の作業負荷を軽減し、勤怠管理を手軽に行うことが可能。また、自治体関係者の活動時間の記録・集計にかかる時間も削減できます。

一方、ワールド防災センターが開発したのが、防災・減災無料アプリ「わたしはココ」です。

大規模災害及び意識不明者の捜索に特化し、衝撃、水没を感知するとユーザー指定登録先に位置情報を自動送信。災害時だけではなく日常の安全も考慮した救命システムとなっています。幼児の行方不明(キャンプ場失踪)、取り残され(幼児熱中症事故)や、閉じ込め、遭難、水難といった過去の事故・災害でも機能を発揮します。

アプリだけでなく、消防DXを支援するクラウドサービスも誕生しています。インフォマティクスが開発した「消防地図クラウド」です。警防課の担当者に代わって水利充足率の算出を支援。消防庁に提出する充足率報告書作成の手間が大幅に軽減されます。また、平常時・発災時の複数の状況を想定し、クラウド地図上にシミュレーション結果を可視化。水利新設の設置検討にも活用できるとか。クラウドサービスなので他機関との情報共有も簡単・迅速に行えるのが特徴です。

※3 「デジタルトランスフォーメーション」の略称。デジタル技術を社会に浸透させて人々の生活をより良いものへと変革することを指す。

災害用トイレ

全国各地で水害・土砂災害が頻発するようになり、事前の避難が重要になる中、避難先の生活で困るものの一つがトイレです。数を確保するため仮設のものを設置するケースがほとんどですが、そんな時に役立つアイデア製品も誕生しています。

総合サービスが開発したのが「避難所トイレ開設セット」。これまでの災害用トイレは洋式便器で使用されることが前提となっていましたが、特製小便器アタッチメントを取り付けることで、洋式便器のみならず男子用小便器でも災害用トイレとして利用することができます。取扱ポスターも同梱されており、誰でも簡単に使用できるユニークな商品です。

また、イーストアイは「災害用マンホールトイレ洋式タイプ/小便器タイプ」を発表しました。東日本大震災、熊本地震で実際に使用された洋式タイプは、足元に段差がないので、つまずきにくく、高齢の方やケガをした方も安心して使用できるのが特徴の一つ。背もたれ・手すり付きで立ち座りをサポートします。小便器タイプは排水ホース式で、一つのマンホールに複数台の設置が可能。組み立てには工具不要で、組み立て時間は3分というのもうれしいポイントです。

“救助する側”を支援する製品・サービスが拡充

近年、洪水や土砂災害を引き起こす大雨や短時間強雨の回数が増加しています。また、首都直下地震や南海トラフ地震など、日本には今後30年以内に発生が予想されている巨大地震がいくつも存在することから、防災・減災の備えは今後需要が高まることが予測されます。

「東京国際消防防災展2023」では、大型車輛や特殊車輛の展示のほかにも、万一の場合の救出器具や防御・耐火服、各種非常用電源、非常食、ドローンやロボットなどの支援サービスも多数展示されていました。また、注目すべきなのが、家庭での普段の備えだけでなく、救助する側を支援する製品・サービスが拡充していること。国や自治体の防災・減災に対する取り組みをサポートする支援サービスのニーズの高まりを感じさせます。