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排せつ物を除菌・脱臭する処理剤で、災害用にも医療用にも(株式会社エクセルシア)

災害用携帯トイレの技術を応用した医療向け製品『IN-DASH(インダッシュ)』を、東京都中小企業振興公社(以下、公社)の「先進的防災技術実用化支援事業(「安全・安心な東京の実現に向けた製品開発支援事業」の前身事業)」を利用して開発しました。

開発概要

SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」を企業活動の中心に据える株式会社エクセルシア。災害用携帯トイレのパイオニアとして、日本のみならず海外でも精力的にプロジェクトを展開しています。
さらに、この携帯トイレの技術を応用した医療向け製品『IN-DASH(インダッシュ)』を、東京都中小企業振興公社(以下、公社)の「先進的防災技術実用化支援事業(「安全・安心な東京の実現に向けた製品開発支援事業」の前身事業)」を利用して開発しました。

【インタビュー】

開発の経緯について代表取締役社長の足立 寛一氏に伺いました。

衛生的な処理剤から生まれた「ほっ!トイレ」

――災害用携帯トイレの開発のきっかけと、それが医療向け製品へと派生した経緯を教えてください。

当社は設立当初、鹿児島県にダイオキシンを分解する大きなプラントをつくり、事業を行っていました。その後、当社が培ってきた“汚いものを処理する技術”を活かしてエンドユーザー向けの製品を作れないかと思い立ち、災害用携帯トイレの開発に着手。2010年に「ほっ!トイレ」として発売しました。

この製品の最大の特徴は、タブレット状の処理剤で除菌・脱臭できることです。主成分の1つである石灰の作用により排せつ物の菌や悪臭が消え、そのまま可燃ゴミとして処分できます。処理剤のほか、簡単に組み立てられるトイレの型紙、ビニール袋、ポンチョ、ティッシュなどがセットになっており、周りの目を気にせずどこでも使えることから、東日本大震災や熊本地震の際にも利用されました。

助成金を活用した「IN-DASH」で 医療現場を悪臭の悩みから解放

――「IN-DASH」開発に助成金を活用されましたが、この製品は医療現場のどのようなニーズに応えるものでしょうか。

医療従事者に向けた製品開発を目的に千葉大学医学部と共同研究を行ったところ、処理剤は大腸菌やコレラ菌、ウイルスまでも24時間静置後に100%除去することが証明されました。病院の手術室や内視鏡室では血液や排せつ物が混じる廃液が発生します。廃液には病原菌やウイルスが含まれたりしますし、悪臭もあります。この廃液処理に私たちの処理剤が役立つと確信できたことから、公社の「先進的防災技術実用化支援事業」の助成金を活用して、「IN-DASH(内視鏡廃液回収容器用脱臭剤)」を開発しました。
「IN-DASH」は処理剤がパウダー状になっており、廃液容器に前もって入れておくことで廃液をすぐに固めて除菌・脱臭し、衛生的な処理を可能にします。千葉大学附属病院の内視鏡室の方々には「この製品を使い始めてから悪臭の悩みがなくなった」と、とても喜んでいただけました。
医療向けの第2弾では「IN-DASHボトル」を開発。これは手術室や内視鏡室で発生する廃液を回収する専用ボトルで、ボトル内にあらかじめタブレットの処理剤がセットされています。このような機能性の高い製品を医療現場に普及させ、院内感染の防止や医療従事者の職場環境改善、働く人の安全・安心に寄与したい。そのために、より安価に便利に使ってもらえるよう、さらなる改良にも取り組み中です。

1つの処理剤をベースに用途を広げ 新たな商品を生み出していく

――海外でも精力的に活動しているほか、新たなプロジェクトも進めているそうですね。

世界にはトイレがない生活をしている人がまだまだ多くいます。こうしたところでも当社の処理剤が役立つのではないかと推測し、発展途上国を中心にこれまで数多くの国を訪問してきました。現地を訪問するのは、やはり自分の目で見て確かめたいという想いからです。

最近の例では、ウガンダへ行った際、当社の「ほっ!トイレ」が国境なき医師団の方々に非常に興味を持たれました。彼らの活動場所は被災地や紛争地域です。メインの移動手段はクルマですが、銃弾が飛んできたり盗賊に襲われたりする危険性があるため、止まることなく何時間も走り続けなければいけません。そうなるとやむを得ず車内で用を足さざるを得ないケースもあるわけで、そうした時に悪臭の無い携帯トイレがあれば、とてもありがたいと言われました。

また、現地の国立病院で処理剤による実験を行ったところ、どんな病原菌やウイルスにも100%の効果を発揮することが証明され、さらに大きな関心が集まりました。

そして現在、新たな取り組みとして「ほっ!トイレ」の使用済みの処理剤をミミズに分解させるプロジェクトを進行中です。ミミズコンポストという処理方法で、ミミズと微生物が生ゴミなどの有機物を食べて分解し、栄養価の高い堆肥に変えるもの。使用済みの処理剤を加えたミミズコンポストでは、良質な土壌をつくれることがすでに確認されています。この方法だと処理剤の最終処分にエネルギーも水も焼却炉も必要とせず、完全な循環型社会をつくれます。

ミミズコンポストと「IN-DASH」を組み合わせれば、院内での排せつ物や廃液を安全に管理・処分できます。世界では今、人類全体の健康を促進するための取り組みであるグローバルヘルスが注目されていますね。特に発展途上国ではエボラウイルスやコレラ菌などによる感染症リスクが高く、大きな課題となっていますが、当社の処理剤は、環境、防災、医療、福祉のすべての側面で貢献できると考えています。

ビジネスとして確立し、永続的な社会貢献の実現へ

――同じように「安全・安心」をテーマとした製品・サービスを開発している方々へメッセージをお願いいたします。

私たち企業の考えと、お客様のニーズとのズレを早めに確認して、社内で共有していくことをお勧めします。初めから100%の完成品ではなく60%くらいの試作品の状態で、ユーザーにヒアリングを行い、そこから出てきた厳しい意見を取り入れていく。それが開発のポイントではないかと思います。特に「ほっ!トイレ」では女性の声に耳を傾け、「IN-DASH」では内視鏡技師へのヒアリングを重ねて、どちらも使い勝手をよくするといった改良を進めました。こうした取り組みにおいて助成金を活用することで可能性はさらに大きく広がります。公社には様々な助成金がありますので、ぜひ活用してほしいですね。

今後は社会貢献ビジネスの可能性を広げていきたいと思っています。イメージしているのは、当社の商品やサービスの売上の一部を、社会貢献や環境保護の取り組みに還元すること。例えば、山用の「ほっ!トイレ」を作り、通常価格よりも高めの価格で販売し、その差額分で海外の難民キャンプに製品を寄付します。さらに、現地でミミズコンポストも導入すれば、使用済みの処理剤から作った堆肥を良質な野菜の栽培に役立ててもらうことができ、結果的に現地の人々の生活向上に貢献できます。このような社会貢献ビジネスを通して、衛生問題と環境問題の両方にアプローチしていきたい、と考えています。

企業情報

社名 株式会社 エクセルシア (Excelsior, Inc.)
所在地 〒154-0023 東京都 世田谷区若林 3-30-2
設立 1997年4月15日
事業内容 事業内容:災害用・医療用排せつ処理剤の開発・製造・販売
サイトURL https://www.excelsior-inc.com/