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AI自動解析で漏水を検知する水中ロボットカメラを開発(株式会社ウオールナット)

公社の「先進的防災技術実用化支援事業」を利用して「水中ロボットカメラ漏水検知システム」を開発し、漏水調査の高精度化と効率化を実現しました。

開発概要

社会インフラを対象に非破壊検査のパイオニアとして調査・点検を専門に行う株式会社ウオールナット。
同社は東京都中小企業振興公社(以下、公社)の「先進的防災技術実用化支援事業(「安全・安心な東京の実現に向けた製品開発支援事業」の前身事業)」を利用して「水中ロボットカメラ漏水検知システム」を開発し、漏水調査の高精度化と効率化を実現しました。

【インタビュー】

開発に携わった第二調査グループの沖安 芳幸氏と金谷 武伴氏に伺いました。

第二調査グループ 課長代理 沖安芳幸氏(右)
第二調査グループ 係長 金谷武伴氏(左)

調査の精度向上に必要な 機器のバージョンアップに助成金を活用

――本製品の開発のきっかけを教えてください。

当社はお客様の要望を伺いながら、社会インフラの維持管理に必要な様々な調査・点検に用いる機器の開発や改良を行っています。そのなかで今回、漏水調査に使用する水中ロボットカメラについて、公社の「先進的防災技術実用化支援事業」の助成金を利用し、「水中ロボットカメラ漏水検知システム」として開発を行いました。

私たちが水中ロボットカメラで調査するのは、農業用水、工業用水などの導水管です。これら導水管は敷設から年数が経つにつれて劣化が生じます。また災害などで破損することもあります。通常は人が立ち入れない、そうした導水管でも断水することなく、漏水箇所を見つけるために水中ロボットカメラを用いますが、従来所有している機器は壊れやすい、画質がよくないなど課題がありました。また、従来の機器では映像データしか取れず、漏水音については別の調査を行う必要がありました。そこで機器の機能性を高め、調査精度を向上させることを目指し、本製品の開発に着手しました。

AI自動解析ソフトの導入で 誰でも高精度かつ短時間で調査が可能に

――開発した製品の特徴、またこの製品によって可能になったこととは。

本製品には水中ロボットカメラ、気中カメラ、ハイドロフォン(集音システム)が搭載されています。これまでは撮影と漏水音の調査を別々に行っていましたが、複数の機能を搭載できたことで一度に両方を調査できるようになりました。

特に漏水音の調査においては、従来は聴診器のような音を増幅させる装置を使い、その音を人間が聴いて漏水箇所を判断していたため、相当な熟練度・経験則が必要でした。しかし開発した製品ではカメラで撮影しながらハイドロフォンで集音。さらに集音データを独自に開発したAI自動解析ソフトで解析すると、熟練度を必要とすることなく、集音した中から漏水音を自動で抽出できます。この漏水音と水中映像を時間軸同期させることで、導水管の破損個所や漏水箇所をスピーディに精度高く特定できるようになりました。

ほかにもカメラの画質向上や、損傷規模を確認できるグリーンラインレーザーを備えるなど、多様な機能によって調査にかかる時間の大幅短縮と正確性の向上を図りました。

また、満水ではない導水管に対しても着脱可能な気中カメラを使用して、水中、気中の同時撮影も実現しております。

従来見落としていた漏水箇所も特定でき 精度アップと料金低減の両面で高評価

――開発で苦労したことはありますか。またこの製品を使った調査に対するお客様の評価はいかがですか。

AI自動解析ソフトは自社内で開発し、水中ロボットカメラはメーカーの協力を得ながら製作しました。水中ロボットカメラの開発は、初めから順調というわけではなく、何度も失敗を繰り返しながら進めました。たとえば、気中カメラを取り付けた際に水中での重心バランスが崩れてしまい、前に進まなくなってしまう、といった現象も起こり、複数ある機能部品の最適な重量、配置バランスを見つけ出すのに苦労したこともありました。一方で、試行錯誤の結果、装置が安定して前進するのを確認した時はとても嬉しかったのを覚えています。

お客様からの評価について、特に印象に残っているものに、実際にご依頼いただいた農業用水の水路を調査した案件があります。これは以前、旧タイプの水中ロボットカメラで調査した時には残念ながら漏水箇所を特定できなかった事案でした。その同じ水路で新しく開発した水中ロボットカメラを用いたところ、今度は漏水箇所の特定に成功。お客様には「これでようやく補修ができる」と大変喜んでいただきました。「漏水」というお客様の無駄なコストを止めることにつながりましたし、当社としても水中の撮影、気中の撮影、漏水音調査と分けて行っていた作業が一度で済むため作業工程が減り、お客様にお安くサービスを提供できるようになったことで、料金の面からも喜んでいただけたと思います。

展示会への出展や広告費も助成対象に 開発・改良製品による新たな需要獲得に寄与

――同じように「安全・安心」をテーマとした製品・サービスを開発している方々へメッセージをお願いいたします。

当社の場合、公社の助成金があったおかげで、付加価値の高いサービスを提供するための機能をより多く製品に追加することができ、企業としてのステップアップにつながりました。また助成金採択者を対象とした「危機管理産業展(※)」公社ブースにも出展でき、調査依頼の引き合いなど、今後につながる交流やきっかけを得ることもできました。広告費も助成金の対象に含まれますので、本制度を利用するメリットは非常に大きいと思います。なので、同じように製品・サービスを開発している方々には、安全・安心な東京の社会を実現していくための助成金制度を、ぜひ活用していただきたいと思います。

開発をするうえで私たちが大切にしているのは、我々が欲しい機能に、お客様からの要望を上手くミックスして取り入れることです。今後もさらに操作性の向上やデータを蓄積し、精度の向上を図っていきたいと思っています。

(※)「危機管理産業展(RISCON TOKYO)」東京ビッグサイトが主催する「危機管理」をテーマとした総合トレードショー

▶「水中ロボットカメラ漏水検知システム」の紹介動画はこちら

「水中ロボットカメラ漏水検知システム」の紹介動画はこちら (youtube動画がご覧いただけます)

 

企業情報

社名 株式会社ウオールナット(Walnut Ltd.)
所在地 〒190-0002 東京都立川市幸町1丁目19番13号
設立 1993年(平成5年)7月16日
事業内容 事業内容:道路水路、トンネル、農業施設などの社会インフラを対象とした調査・点検、 ドローンレーダーやAIソフトなどの調査機器の研究開発
サイトURL https://walnut.co.jp/